「としまメソッド」を編み出し、 誰もが主役の豊島区から 明るい未来の「担い手」を育む。【後篇】
OVERTURE
豊島区教育委員会による「SDGs達成の担い手育成事業」の「立ち上げ期」となった2021~2022年度。区内の小中学校では、多様な取り組みが進められました。2023年度以降は「推進・発展期」として、より一層の充実化が期待されています。さらなる発展を遂げるにはどうすれば良いのか。豊島区におけるSDGs・ESD(持続可能な開発のための教育)の未来像を考えます。
この2年でSDGs達成に向けた取り組みについて、深く理解したとしまの子どもたち。そんな担い手たちからさらに幅広い世代へSDGsへの理解と達成に向けた活動や取り組みが広がっていくことにも期待が寄せられています。
澤田教育部長 「保護者の方々から『SDGsが子どもたちの将来にどんなメリットを与えるのか』と疑問を寄せられることもあります。大人に向けて持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)の意義を伝える難しさを痛感しています」
金子教育長 「豊島区の子どもたちはSDGsネイティブですが、親世代は必ずしもそうではありません。大人がSDGsを自分ごととして捉えるには、地球が絶体絶命の状況にあるという危機感を持つことが重要です。実際、豊島区は2014年に『消滅可能性都市』の指摘を受けたことで強い危機感を抱き、持続発展するまちづくりに取り組むようになりました」
学校SDGs推進アドバイザー 阿部氏 「気候変動を始めとする環境問題や戦争など、世界には一朝一夕に解決できない問題があふれています。だからこそ、子どもたちが未来の希望を信じるためにSDGsが必要なのです。一方で、大人向けのESD(持続可能な開発のための教育)が不十分だという状況も見過ごせません。子どもからSDGsを伝える、地域各所にSDGsにまつわるチラシを設置するなど、さまざまな手段でSDGsに触れる機会を増やすことが大切ではないでしょうか」
SDGs環境教育アドバイザー 桝野氏 「私も、豊島区でSDGsの活動を発展させるには保護者を始めとする、大人のためのESD(持続可能な開発のための教育)が必要だと感じます。『人新世』という言葉に代表されるように、現在は人類の活動が地球に取り返しがつかないほど大きな変化をもたらしている時代です。そうした危機感を出発点にすれば、SDGsの取り組みがさらに広がるのではないでしょうか」
SDGs環境教育アドバイザー 桝野氏 「私も、豊島区でSDGsの活動を発展させるには保護者を始めとする、大人のためのESD(持続可能な開発のための教育)が必要だと感じます。『人新世』という言葉に代表されるように、現在は人類の活動が地球に取り返しがつかないほど大きな変化をもたらしている時代です。そうした危機感を出発点にすれば、SDGsの取り組みがさらに広がるのではないでしょうか」
子どもたちが地域の人々と交流する機会を設けているのは、小中学校だけではありません。SDGs環境学習リーダーの町田さんは、自身がボランティアとして参加する区民ひろばの活動をこう語ります。
SDGs環境学習リーダー 町田氏 「区民ひろば清和第二で年2回開催しているのが、乳幼児とその保護者に向けた『生き物を見よう』というイベントです。ヤゴやバッタ、チョウといった生き物を室内に持ってきて、参加者に観察してもらっています。身近な場所で環境学習ができることはもちろん、子育て中の方々の孤立防止につながるという点でも、非常に意義のある取り組みだと思います」
区内のさまざまな場所で、加速する未来のためのアクション。その中には、区内の他の学校やエリアで実践できる事例も数多く含まれているはずです。
学校SDGs推進アドバイザー 阿部氏 「2年間で各校の特色ある取り組みが広がったことは素晴らしいと思います。これまでの実績を活用すれば、豊島区ならではのSDGsの取り組み、いわば『としまメソッド』を編み出せるのではないでしょうか。そして、そのためには各校の取り組みを共有することが欠かせません。教員の異動などをきっかけに活動が途絶えてしまわないよう、日頃から教員と地域の方々が密に交流できるようなまちのかたちが重要です」
小中学校の児童・生徒に加えて、その保護者や地域住民、乳幼児までをも対象にした豊島区のESD(持続可能な開発のための教育)。「誰一人取り残さない」取り組みの数々が、地域のこれからを明るく照らしてくれることでしょう。
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